ニュートン算

こんにちは。
今回は中学受験を目指すならば、必ず扱うニュートン算のお話です。

よろしければ、以下の問題をお子さんに解かせてみてください。


【問題】
開店前から行列のできているケーキ屋があります。この行列ははじめから一定の割合で増えており、開店後もその増える割合は変わりません。レジが1つの時は開店から1時間40分で行列がなくなりますが、レジが2つの時は30分で行列がなくなります。どちらのレジも1人にかかる時間は同じです。
行列ができはじめたのは開店の何分前でしょうか?
(※青山学院中等部 2017年度入学試験より 引用)



今回は下のような解法を紹介したいと思います。

1.速度の比を考えて計算する
2.方程式を立てる(「方程式」を知っている場合に限る)



1.速度の比を考えて計算する


最初に並んでいる人数もわからないので減っていく速度に注目します。
上の図のように減少速度について線を引いてみると行列に並んでいる人数が0人になるまでにかかる時間がレジ1台と2台で10:3(100分:30分)であることがわかります。

つまり速度は3:10ですね。

レジ1台の人数の処理速度を□、行列の増える人数の速度を〇とすると

□ - 〇 = 3 ‥‥‥①
2×□ - 〇 =  10 ‥②  

という2つの式が立てられます。


式②は□ ₊ □ - 〇 = 10 と書き直せ、式①より□ - 〇 = 3 ですから

□ ₊ □ - 〇 = □ ₊ 3 = 10 となり、□ = 7となります。

式①に□ = 7をいれると 7 - □ = 3ですから〇 = 4となります。

このことから、レジ1台の人数の処理速度:行列の増える人数の速度 = 7:4となります。

つまり、レジ1台が7人を処理している間に行列は4人増えるということです。


そして、この問題の一番肝心なところはここからです。

「レジ1台が7人を処理している間に行列は4人増える」の中の「間に」とは一体どのくらいの時間なのでしょうか?


1分間?2分間?100分間?


実は「好きに決めてよい」のです。

これを勘違いしている人は多いです。当然のように「1分間にレジ1台が7人を処理している間に、行列は4人増える」としています。もちろん好きに決めても良いので、「1分間」にしても正解を導くことはできます。しかし、本質を理解しているとは言い難いです。


「間に」が何分であっても上記の7:4を保っていれば「開店何分前から行列が出来ていたのか」という答えを導くことができることを示します。


せっかくなので、まずは「1分間でレジ1台が7人を処理できる」とすると「1分間で行列は4人増える」となることを使って解いてみます。

レジ1台を使うと100分で行列が無くなることから、レジ1台が100分で処理できる人数は7×100 = 700人であり、行列は100分で4×100 = 400人増えることから、開店前に並んでいた人数は700 - 400 = 300人となります。

そして、開店前に300人が並んでいて、1分間あたりに4人が行列に並ぶのですから

行列ができ始めたのは300 ÷ 4 = 75 となり、開店 75分前 となります。



好きに決めて良いことを示すために

「100分でレジ1台が7人を処理できる」としましょう。すると「100分間で行列は4人増える」となるので、これを使って解いてみます。

レジ1台が100分で処理できる人数は7人であり、行列は100分で4人増えることから、開店前に並んでいた人数は7 - 4 = 3人となります。

開店前に3人が並んでいて、100分間あたりに4人が行列に並ぶのですから

行列ができ始めたのは100 ×  3/4 = 75 となり、開店 75分前 となります。


どちらも同じ答えになりましたね。

つまり、この問題の情報量では「開店75分前から行列ができていた」ことだけはわかりますが、「レジが何人を処理したのか」とか「開店前に何人が行列に並んでいたのか」といったことは一意に定まらないため、明確な人数として求めることができません。



では何故、「好きに決めて良い」のか、ということを可視化するために方程式を立てて解いてみましょう。


2.方程式をたてる。

100分で処理した時と30分で処理したときの式を立てて
最初の行列が何分前から並んでいるかを考えます。
レジ1台の1分間あたりの人数の処理速度を□[人/分]、1分あたりに増える行列の人数を〇[人]、開店前に行列ができ始めた時間を☆[分]と置くと

100×□ = (☆+100)×〇 ‥‥③

30×2×□ = (☆+30)×〇 ‥‥④

の2式が立てられます。

式④の両辺を5/3(100/60)倍すると 100×□ = (☆+30)×5/3×〇となるので、式③の左辺にこれを代入すると、(☆+30)×5/3×〇 = (☆+100)×〇となります。

両辺を〇で割ると☆だけが残るので☆について解くと

☆=75 。つまり答えは開店75分前ということになります。


ここで、検算をしてみましょう。75分前から並んでいたとすると式③、④はそれぞれ

100×□ = 175×〇 ‥‥⑤

60×□ = 105×〇   ‥‥⑥

となります。式⑤の両辺を100と175の最大公約数である25で割ると 4×□ = 7×〇 となります。また、式⑥の両辺を60と105の最大公約数である15で割ると 4×□ = 7×〇 となるので

式⑤と式⑥は両方とも 

4×□ = 7×〇 ‥‥⑦

となります。

これは 4×7 = 7×4 なので□=7、〇=4とやりがちですが、惜しいです。

正解は□= 7×k 〇=4×k (kは任意の数)です。

これはつまり、□:〇 = 7:4であればkの値は「好きに決めて良い」ということです。


例えば、k=2としてみましょうか。

すると□ = 7×2 =14、〇= 4×2 =8となります。

これを式⑦に入れてみると

4×14 = 7×8 = 56となり、成り立ちますね。


ここで□は「レジ1台の1分間あたりの人数の処理速度」であり、〇は「1分あたりに増える行列の人数」でしたね。つまり、

レジ1台の1分間あたりの人数の処理速度:1分あたりに増える行列の人数=7:4

であれば「好きに決めて良い」ということになりますね。


そして、kをどんな数字にしても「行列ができ始めたのは開店75分前」ということは一切変化しません。






この問題はニュートン算としては標準的な難易度です。

おそらく、私立中学受験に向けて熱心に勉強している小学生であれば多くの子が解けると思います。


しかし、本質を理解できているかどうかを確かめるために「なら、開店前は何人が並んでいたの?」と聞いてみてください。


もし「300人」などの人数の答えが返ってきたら不正解です。

正解は「定まらない」や「わからない」ですから。



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